奈良いのちの電話協会NIDロゴ
奈良いのちの電話:0742-35-1000
 

相談したい方
支援してくださる方
活動のご案内
奈良いのちの電話協会
講演会・イベント
相談員の募集
広報誌
シリーズ・相談の現場から
出版物
統計データ
全国のいのちの電話


奈良いのちの電話は
花 ひとりで悩まないで・・・
相談員の募集

このシリーズは、電話を受けている相談員が、相談の中で感じたことを紹介したものです。内容は物語り風にしていますが、実際の相談内容とは異なります。

「夫と別れたいが、娘は黙っているだけ」

  うっとうしい雨の午後、受話器から「あの・・・主人のことで・・・」と弱々しい声が聞こえてきた。
 最初に夫の浮気が発覚したのは、彼女が妊娠中だった。「子どものためにと、離婚する勇気が出ないまま今日に至った。その娘も高校生になる。憎しみばかりが増幅する夫に、さらさら未練はない。とにかく別れたい」と訴えてきた。

「浮気をくり返す夫は、問い詰められると暴力をふるう。そんななかで心が痛み始め、神経科に通院。いまは夫の外泊にほっとする。顔を見るのも嫌でたまらない」と続く。そこまで二人の間は冷え切っているのに、夫は「父親として、子どもが成人するまでは責任を果たす」と、子どもへの愛情は夫婦間とは別のような口をきくので、一層腹が立つようだ。

 話に耳を傾けていて、私は両親の離婚をテーマにしたテレビ番組を思い出していた。 「仲の悪い両親を見せられているより、別れたほうが子どものためだ」という内容だった。そこで、娘さんがどう思っているのかを聞いてみた。
「父親と別れて、私と二人で暮らそう・・・」という話はすでにしていたようで、その話に「娘は何も言わずに、じっと黙っているだけでした」と、彼女は悲しそうな声で応えた。 

彼女は、子どものころを思い出すと「父親に抱かれた記憶はないし、母親からは遠ざけられていた」という。さらに、「両親は生存していてもいないに等しい」と吐き捨てるように語った。しかし、彼女は心のなかを出していくうちに「私は、自分が親からされてきたことと同じようなことを、娘にしているのでは・・・」と言い出した。娘の気持ちを考えると、さらに自分を責めてしまうようだ。 

この人は、自分が小さいころに受けた心の傷口が癒されずにいて、夫の浮気でうずきだし、化膿させてしまったのかもしれない。
 寄り添える人が本当に誰もいないのかと、私も辛くなっていたら「弟が心配して、ときどき電話してくれる」と言ったのでほっとした。「弟によく相談してみる」と結んだので、どうぞやさしい姉思いの弟さんでありますように、と祈りながら受話器を置いた。


【目次に戻る】
 
社会福祉法人 奈良いのちの電話協会