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このシリーズは、電話を受けている相談員が、相談の中で感じたことを紹介したものです。内容は物語り風にしていますが、実際の相談内容とは異なります。

「人が怖くて話ができない、消えてしまいたい

 「どうすれば自殺という形をとらずに死ねるのでしょうか。自殺すれば、また親に迷惑をかけてしまいます」いきなりの問いかけに「どうしたの? よかったら話してみて」と優しく促す。彼女は26歳。人が怖くてうまく話ができず、みんなに迷惑をかけてばかり。情けなくてみじめ。どうにかして自分の性格を変えたいけれど、どうにもならない。生きていく値打ちがないのでこの世から消えてしまいたい、と泣きながら訴え続ける。

「小さい時から人の中に入っていけなくて、無理に話しかけようとすると顔が引きつってしまうんです。みんなに変な子やと思われていました。それでも、中学高校の頃は勉強だけは好きだったので、なんとか登校できていたのです。成績だけが私の生きている証でした」
 自分は人と交わるのが下手だから、人と交わる職に就いて自分を鍛え直そうと教育大に進み、小学校の先生になった。でも、子どもを前にどうしても授業ができず、たった4ヶ月で挫折。その後ずっと家に引きこもっている。両親は共働きで、家事だけでなく祖父の看病も自分がしなければならないのに、思い悩んでそれもできない。毎日死ぬことばかり考え、自殺未遂をして親に迷惑をかけたこともあると言う。その話し方はきっちりしているが、逆に、大人になりきれない心が覗いてみえる。

 「人と交わりができないのは辛いね」とその気持ちを受けとめてみるが、どうにも前へ進まない。あるがままの自分を認め、その自分を受け容れ、そこからもう一度自分の周りを見直してみることができたなら、あるいは人生を前向きに歩んでいくことができるのではないだろうか。
 1時間あまり話して気分が落ち着いたのか、少し周りが見えてきた様子。「うちのおじいちゃんもつらいやろうね」と、寝たきりの祖父を思いやるように、ぽつんとつぶやく。
 外はぬけるような青空。自分が消えてしまうことなど考えずに、たとえ少しでも前へ進んでいってくれることを祈りながら、受話器を置いた。

 

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社会福祉法人 奈良いのちの電話協会