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花 ひとりで悩まないで・・・
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このシリーズは、電話を受けている相談員が、相談の中で感じたことを紹介したものです。内容は物語り風にしていますが、実際の相談内容とは異なります。

「家族を失った高齢者の孤独

「ひとりでいるのは、寂しいですよ」、そのつらさがジーンと伝わってくるような声だった。「この深夜に、本当に電話の前にいてくれるのですね。老人のぐちでも聞いてもらえますか」。夜も眠れず、あれこれ思いなやみ、寂しくて仕方がない様子である。
 「この電話があるのは知っていましたが、かけるのにとまどっていました。でも思い切ってかけてみました。私は78歳、5年前までは病気ひとつせず、ひとりで家事一切してきました。なぜひとりぼっちになったかといいますと・・・私の無二の宝だった娘は、バレーボールの選手でしたが、高1の春に突然白血病で倒れ、半年間苦しみ通して他界してしまいました。『私のような者をどうして産んだの?』と言われたのを気にした妻は、1年あまり精神を患って、自殺してしまいました」。
  
淡々とした話しぶりが、涙を誘った。愛していた娘と妻を短期間に失ってしまった悲しみを想像し、ただ低くうめくのみであった。「私は、悲しみをふっ切るように、会社人間に徹しました。夢中でした。その挙句の果てに、親孝行で自慢の息子が結婚のための式場を決めに行く朝、交通事故であっけなく即死してしまったのです」。急に言葉が途切れる。つらい思いが胸にこみ上げてきたのだろう。私も胸がしめつけられ、受話器をきつく握る。「もうすんでしまったことです。でも、忘却の彼方に追いやってしまえなくて・・・、つらくて悲しくて・・・」。ついにおえつが洩れてきた。

「今日は息子の命日で。娘と妻と息子の3人のところへいってしまいたいとさえ思って・・・。5年前に高血圧で倒れ、救急車で運ばれ、いまも右側の手足がしびれています」。いまの身の上に話が移る。「食事や家事はどうされているのでしょうか」と尋ねる。ヘルパーの人が週2回、2時間面倒をみてくれているのと、デイサービスも利用しているとのこと。ほっとすると同時に、身近なケアがもっと濃密になるよう、祈るような思いになる。
 「なるべく近くの民生委員に連絡をとられたり、近所の皆様にもお願いするようにしたらどうでしょうか」と助言すると、「人の世話をしても、世話になりたくないと思っていましたが、非常のときにそうはいってられませんよ。つね日頃のまじわりが必要なんですね。現に見ず知らずのあなたに対して、ぐちばかりで恥ずかしいですが・・・。なるべく勇気を出して近所の方にお話しすると、いまのように胸につまっていた物がとれたような気になるかも知れません」。 

私は聴き役だけだった。思うように身体が動かず、ひとりで深夜目がさえて、不安な思いにかられているとき、人に話しかけ、人の声を耳にしてほっとしてくださったのはうれしい。
  つねに心から寄り添って話を聴かせていただけるよう、温かい姿勢を持ちつづけたいと、改めて思わされた。

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社会福祉法人 奈良いのちの電話協会