奈良いのちの電話協会NIDロゴ
奈良いのちの電話:0742-35-1000
 

相談したい方
支援してくださる方
活動のご案内
奈良いのちの電話協会
講演会・イベント
相談員の募集
広報誌
シリーズ・相談の現場から
出版物
統計データ
全国のいのちの電話


奈良いのちの電話は
花 ひとりで悩まないで・・・
相談員の募集

このシリーズは、電話を受けている相談員が、相談の中で感じたことを紹介したものです。内容は物語り風にしていますが、実際の相談内容とは異なります。

「本当は別れたくない」

 「もう我慢できません!別れたいのです」受話器の向こうはかなり興奮している様子。荒々しい息づかいが伝わってくる。

 「主人が帰ってこないのです。昨夜からまんじりともせずに、待ち明かしました。私も良いとはいえません。細かいことまで文句を言いすぎました。最初は、他愛のないことだったのですが、今は違います。
 私の留守中に、知らない女が家に来て居たのです。夏休みに二人の子どもを連れて実家へ行ったのですが、予定より二日早く帰ってきたので『お父さんが喜ぶね』って、子どもと話をしていたのに、帰ってみると女の人と一緒に居たのです。一瞬頭がカッとして訳がわからなくなって・・・。私が取り乱したものだから子どもは泣き出すし、その子どもを連れて夢中で飛び出し、疲れた体でうろうろ歩きました。
 それ以来、主人は帰宅しても不機嫌で口もきいてくれません。それから堂々と外泊するようになったのです。私はそれから心身ともに主人を許せない・・・。
 顔を合わせると嫌悪感さえ感じます。主人は『文句があるなら出てゆけ!』ってどなるんです。でもね、子どもを大事にするし、子どもにはやさしくて良い父親なんです。だから主人が居ると子どもの目が生きいきして楽しそうです。それに、生活費は全部私に渡してくれるから、友人が『あなたも割り切って好きなことでもすればいい』って言います。だけど、幼稚園児と小学生がいては自由に外出すらできません。
 主人は『本当はお前が好きだから、お前とは別れる気はない』って言います。『それならあの人と別れて』ってたのんでも『いずれ別れる』って勝手なことを言うばかり。この頃は顔を合わせるのを避けているみたいです」
 
 その時、人の気配がした。「すこし待ってください」
 もどってきた彼女の声は、いく分明るくなって「ごめんなさい、主人が着替えに帰ってきたもので」
 夫を待つ不安が、顔を見て吹き飛んでしまったのだろうか。
 「あなたの本心は別れたいのですか? それとも帰って欲しいの?」
 「本当は夫に帰って欲しいのです。あの人とてもやさしい人だから。私も悪かったと思います。いずれあの女の人と別れるって約束したのだから我慢します」

 つかの間の対話のあとで、女心は一変したようだった。


 【目次に戻る】
社会福祉法人 奈良いのちの電話協会