奈良いのちの電話協会NIDロゴ
奈良いのちの電話:0742-35-1000
 

相談したい方
支援してくださる方
活動のご案内
奈良いのちの電話協会
講演会・イベント
相談員の募集
広報誌
シリーズ・相談の現場から
出版物
統計データ
全国のいのちの電話


奈良いのちの電話は
花 ひとりで悩まないで・・・
相談員の募集

このシリーズは、電話を受けている相談員が、相談の中で感じたことを紹介したものです。内容は物語り風にしていますが、実際の相談内容とは異なります。

「親の敷いたレールを走り続けて・・・」

 「ちょっと、よろしいですか」遠慮がちな重い声。医学部の学生だと言う。「勉強についていけなくて・・・。自分の限界が見えてきた。こんな勉強ばっかりして何になるのかと思う。2ヵ月位前から眠られない」と元気のない声。その向こうにある彼の世界を想像し、思わず受話器を持ち直す。

 「サラリーマンの親は私を医者にしたかったようです。一人っ子で、何不自由なく育ち、自分で言うのはおかしいけど素直で良い子でした」と回想する。しかし、歴史と絵画が好きだったという彼自身の希望や目的など入る余地がない程、親の期待の影が、ぴたっと背に重く張りついているのを感じる。中学・高校ではクラブ活動にもほとんど参加せず、友人も少なく、二浪したことでのこだわりとコンプレックスが拍車をかけて、孤独の世界へと追いやっているのだろうか。
 
 「あいつらは親が医者だから、いろんな意味で有利なんですよ」友人たちをあいつらと呼び、排他的なエリート意識に育て上げられた彼には、自己肯定、他者否定の構えが感じられる。専門課程の勉強に入り、初めて自分が医学の道を選んだと気づいたようだ。親の敷いたレールをひたすら走り続けてきた青年は、医学への情熱や使命感を考える余裕がなかったのだろうか。「いっそ留学でもしようかと思う」と言う陰に、あせりと逃げの気持ちがうかがえる。彼には、人生の"間"が必要なのかも知れない。
 
 「こんな時間までいいんですか」と、こちらを気遣う余裕ができ、緊張がやっとほぐれたように思える。今からでも遅くない。自己の存在感や価値観に気づいて欲しい。そして悩み、気持ちをコントロールしながら、彼自身の人生を歩んで欲しい。

  
 【目次に戻る】
社会福祉法人 奈良いのちの電話協会