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このシリーズは、電話を受けている相談員が、相談の中で感じたことを紹介したものです。内容は物語り風にしていますが、実際の相談内容とは異なります。

「両親の別居で心を痛める子ども」

 「私たち夫婦は今、別居中なのです。でも、時々主人がやって来ます。ふだん主人の悪口を子どもに聞かせていながら、迎え入れる私に子どもは矛盾を感じているのか、ちょっとしたことに腹を立てて、暴力をふるうようになりました」 夕食の支度に忙しいと思われる時間に、低く乾いた声が受話器から伝わってくる。子どもは小学校4年の男の子。最初は持っているものを投げる程度だったが、段々エスカレートして、最近では自分の方が負けそうになるという。

 「子どもが暴力をふるうのは私たち夫婦の問題からきている。原因は主人と私にある」と自らを分析する。それでいて、夫への不満と攻撃を電話口からぶつけてくる。
 「主人に私のわがままを認めてもらいたいと思うが、男の"こけん"にかかわるらしく絶対に妥協しない。話はいつも平行線。家族の中で自分だけいい子になり、頑固で妻の立場などちっとも考えてくれない。何のために結婚したのか分からなくなって別居した」と一気に話す。「私のわがままっておっしゃいましたね。それはどういうことでしょうか」やっと言葉の切れ目をとらえて問いかけてみる。

 夫の両親と未婚の妹との同居で何事も親中心の生活。献立まで干渉され、私はまるでお手伝いさんみたい。そのうえ両親が孫を溺愛するので、自分の子でありながら思うような教育もできない。このままではだめになると思い、煮え切らない主人を説得し子どもを連れて実家を出た。当然夫もついてくると思ったのに、一週間ほど一緒にいただけで両親のもとに帰ってしまった。夫のふがいなさに離婚しようかとも考えるが、生活費は夫に頼っているのでその勇気もない。来るたびに夫の真意をただすが本心を言わないで、私が折れて帰るのを待っているようだ。これから先のことを考えると不安な気持ちになる。
 「今も勉強のことで注意すると、目の前にある物を私に投げつけて外へ飛び出してしまったんです」とここまで話し、一息つく。
 「それは大変ですね。あなたはお子さんの荒れる原因が何であるか、よく分かっていらっしゃるようですが、とにかく両親の・・・」そのとき誰か入ってきた様子で電話が切れる。子どもが帰って来たのであればよいが・・・。

 投げた物が散乱した部屋から電話をせずにはおれなかった母親と、夕暮れの街へ飛び出していった男の子を思い浮かべ、しばらく受話器を握ったままだった。
 二世帯同居の重圧に悩む妻を支え切れない夫と、充分な話し合いがないまま別居を強行した妻。その間で両親の葛藤を目にして心を痛める子ども。最大の犠牲者は、これから多感な時期に入っていく子どもであることを、このお母さんに気づいてもらいたかった。

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社会福祉法人 奈良いのちの電話協会